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2022.5.27 例会報告

 「2022年要求アンケート」活動において、今年も様々な要求や実態をお寄せいただきました。10月から社会保険の強制適用化となりますが「依然未加入のままである」ですとか、有給年5日義務化されても「休みが取れない」といった声があります。

 今後の活動に生かしていきますが、先日、こうした声をもとに、私たちの職場における「労働組合のイロハ」として、学び語り合う企画を設けましたので以下簡単に紹介します。

 

「労働組合と私たちの職場」

 私たちの法律関連職場は、「書生」や「腰掛け」などと言われ、働く環境も未整備だった状況において安心して働き続けられる職場環境づくりにむけた取り組みを地道にすすめてきました。賃上げの問題から社会保険加入や就業規則の整備、また、法律事務員の全国統一研修制度の確立を通じ、単なる事務職員から雇用主(弁護士)の「補助者」「パートナー」という法律関連職場にとって欠かせない役割を担う存在に少しずつ変化しています。

 その一方、小規模職場であるが故に、「労働者」として声を上げ、経営者と対等に交渉していく「労働組合」として行動する難しさもあります。

 基本的にはどこの職場においても経営者と労働者の利益は完全に一致はしません。しかし、そこでの協力・信頼関係がないと知識や経験の継承・蓄積もなくなり、職場の経営基盤を壊すことにもなってきます。そうしたなかで、職場における対等平等の関係づくり、そして、建設的『闘う提案型』な取組みが欠かせません。私たちも職場のなかでは孤独なこともありますが、労働組合としての仲間が全国にいます。

 特に今日は、不安定雇用の増大により、個々の生活が苦しいその生きづらさにあるのは「自己責任」として、立場の弱い労働者に泣き寝入りを迫る状況が少なくありません。事実にもとづき科学的に物事を見定め、仲間と力をあわせ、変えていく労働組合の役割があらためて問われている時代です。自分たちの要求を仲間の利益と重ね合わせ、その本質的解決を目指して団結してこそ私たちの権利が勝ち取れるというのは歴史が証明するところです。

 

 そもそも、会社は労働者と労働契約を結ぶ際には賃金、労働時間など「労働条件」を明示しなければなりません(就業規則の明示)が、雇用主であっても意外と知らない労働法。依頼者にかっこいいこと言っても自分の足下の労働条件は…?この業種のあるあるですね。

 やはり、休暇や退職金、健康診断等の就業規則について、不備があれば正していくことが大切です。労働基準法はあくまで「最低限の基準」であり、よりよい労働関係、条件を求めて使用者と労働者は「対等・平等」に交渉できるというのが建前ですが、立場の弱い労働者の泣き寝入りが多いのが現実ですがそこは私たち労働組合の出番です。

日本国憲法に「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と明記されていますし、「団体交渉」(ダンコー)は経営者が団体交渉を正当な理由なく拒否することは、労働組合法上、不当労働行為として禁止されている上、誠実に対応することが求められます(誠実義務)。

 これらの権利は、労働組合法で具体的に規定されており、これを使用者が侵害することは不当労働行為として禁止されており、法的に責任を追及されます。そして、職場で「就業規則」が設けられている場合であっても、労働組合が交渉により、よりよい条件で労働協約を結んだ場合、この協約の範囲で労働協約が就業規則に優先するのです(労働協約の締結)。

 

「私たちの要求と現状」

 何といっても働くうえで一番の要求が「賃金」ですが、要求の根拠として、労働力の価値は、労働者やその家族の生活費にかかる費用で決まります(生計費原則)。

 そして、最低賃金法9条2項「労働者の生計費および賃金ならびに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めなければならない」3項「労働者の生計費を考慮するにあたっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」とありますが、みなさんの職場はいかがでしょうか。低すぎる最低賃金制度の問題もあります。やはり労働組合として求める一律1500円。8時間働けば人間らしく生活できる賃金制度の確立は欠かせません。

 労働組合に寄せられる一番多い相談が「ハラスメント」。パワハラの定義とされる「職場において優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの(身体的もしくは精神的な苦痛を与えるもの)」ですが、その対策はまだまだ不十分です。その背景にあるのが「ジェンダー」。世界的にも大きく立ち遅れているのが日本の現状です。女性の非正規率(女性53.6%、男性22.4%)、低賃金(女性293万円、男性532万円)や世界でも異常な長時間労働の実態に正面から取り組み、改善をすすめていかなければなりません。

 

「さいごに」

 このように、働く職場の不満や要求があっても、声をあげるのは大変かもしれません。でも、ともに働く仲間と一緒に考え、すこしずつ声を上げ、改善を勝ち取ってきたのが労働組合です。まずは、こうしたひとりひとりの声をあつめ、みんなで解決策を求めて話し合うことからです。不満はなくても、同じ業種で働くもの同士が集まることで、新たな知恵や工夫が生まれます。コロナ禍のもとですが、やはり直接会って話しをすることで次につながるエネルギーが生まれます。

 今後も定期的にあつまり、学び、交流する機会を大切にしていきたいと考えていますので、お気軽に遊びに来て下さい。